誰が子どもの夢を開くのか?

著者:草刈 秀紀(WWFジャパン)

 私は、WWFという自然保護団体で仕事をしている。なぜ自然保護の道に進んだのか?その全ては、子どもの頃に父親に誘われて近くの山にカブトムシやクワガタムシを捕りに行ったことがきっかけだと思う。小学校の時に、毎年夏になると、朝4時頃に起こされて、眠たい目をこすりながら父親が作った手作りの虫かごを下げて、歩いて山に登った。山と行っても高い山ではない。子どもが歩いて上れる程度の山である。当時、クヌギやコナラなど、カブトムシやクワガタムシが一番好む樹齢の木々が生い茂っていた。もちろん、クワガタ、カブト以外にスズメバチやアシナガバチなども飛び交う雑木林の中を探し回った。


 足で一蹴りすると、あめ玉が空から降ってくるようにクワガタムシやカブトムシが降ってくる。わずかな時間で虫かごがいっぱいになった。虫取りの楽しみや生き物の大切さを教えるのは親の努めだ。それが今は、消えている。ハチが飛び交う雑木林は、危険な場所と考えている人も多い。でもそれは、かかわり方次第なのだ。里山で親と子供が自然と触れ合い、子どもから学び、体験して理解した親たちが新たな知識を子どもたちに伝えることが重要だ。


 もう一つ、生き物の死に悲しむことも必要だ。悲しむだけではなく、多くの生き物の死のおかげで私たちが生きていることを体感することができるのも里山の魅力かもしれない。


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