横沢入りのオオタカの巣立ちにつきあって
横沢入のオオタカの調査は1997年7月から1999年10月までの「横沢入オオタカ調査プロジェクト」の一応の終了を受け、「里山遊志」を主体とする調査へと引き継がれて、はや丸2年が経過しました。 私が横沢入のオオタカの調査に参加しました経緯は、オオタカニュース20号に掲載されておりますが、1999年2月に参加してまもなく2年と9ヶ月が経とうとしています。
その間1998年の営巣についてはビデを撮影されたものを見せてもらい、1999年には、4月の末の段階で、オオタカの巣にフクロウが乗ってしまい、オオタカが営巣木を変更するといったアクシデントがありました。しかしその年の9月、10月頃には、目の前に幼鳥が再三現れ、一度は谷よりあがってきた幼鳥が目の前数メートルのところで旋回して、私の観察地点から2,30メートル離れた神社脇の松に、こちら向きに停留してくれ、じっくりと3,4分間観察させてくれました。(これが今まで一番近く、じっくり見えた機会です。)そしてフクロウに負けずに巣立っていったようでした。
そして翌2000年は再び、旧営巣木に戻って、営巣を行いました。その年は巣立ち数について正確な把握はできませんでしたが、幼鳥の確認はできております。
そして今年2001年は、4月28日に営巣木への立ち入り調査を行いましたが、目立った巣材の搬入や、形跡は確認できませんでちょっと心配して戻りました。
そして次に5月12日、5月26日と営巣調査には入りましたが、多少12日には羽が少し巣についていそうだ位で、確実な営巣行為へつながる確証は見受けられませんでした。そしていずれも、時期的に今年は駄目かとの悲観的な気持ちで戻ったことを覚えております。
そして次の調査のために入りましたのが6月9日でやっと営巣のため使用を確認しました。次の6月23日には、確実に抱卵中であることを確認して戻りました。
そして翌週の6月30日には、営巣調査にムササビの会のNさんが同行し、今回はカメラを持って入りました。そこで初めて、1羽の雛が親鳥の脇に出て動き回っているのを確認しました。そしてよく見ますともう1羽が、かなり小振りですが居るようでした。そしてとても興奮しながら、プロミナから、カメラに三脚を替え再びプロミナにと交換を繰り返し、二人で興奮しながら観察と撮影を終え戻りました。そして直ちにスピード仕上げのラボに飛び込み、現像を依頼して待つこと約1時間、しっかりと2匹の雛をとらえていました。
とても遅い雛の羽化に感動しながら、2週間後に最後の機会と思って調査に入りました。そうしますと巣には雛は居らず、やはり遅かったかと思われました。しかし巣を見ますとエサの鳥の固まりが2つ、まだ血が滴っていて、蠅やハチがそれにたかっているのが見え、まだ巣立っていない、1羽は居るぞと思いつつ、木のあちこちを探しながら待つこと約20分、手前の木や枝の陰になりながら、営巣木の左側の少し上の枝に黄色い脚のようなものが発見され、やったと思いつつ、少しプロミナのセットする位置をずらしてみますが雛は見えませんでした。そして約15分ぐらい経過した頃、尾根側から親の鳴き声が聞こえると同時ぐらいに、雛が鳴き声をあげ始めました。その時谷側でもう1羽の雛が鳴き声をあげて少し移動しました。しばらくして親が巣に戻ってきてすぐに谷側に飛び去りました。 雛は巣に戻り餌を食べ始めました。そしてかなり熱心に食べておりましたが、やがて満足すると羽を掃除し、やがて巣のすぐ真上の、親がいつも止まって雛を守って居た枝に雛が止まりました。そしてまた15分ぐらいじっくりと、その雛を観察することができました。観察ではそれはほぼ親鳥と同じぐらいに成長した、メスのようです。
最初はこちらの存在に気づいていなかったようでした。そしてとてものんびりした所作をいろいろ見せてくれました。そしてこちらもプロミナカメラと交代しながら、撮影をし観察しつつスケッチをしていました。そのうち今度は谷側の雛が鳴き声をあげながら少しづつ場所を移動していました。そのうち今度は谷側から親鳥の警戒音が聞こえてきました。そのころにはこちらに雛も気づいて、じっと注視するようになりました。そして少し後に親鳥が谷側より巣に戻り、雛と巣の上で、互いに羽をばたばたさせながら、交歓しているように見えましたが、少し後に親が今度は尾根側に飛び去りました。そして時間の確認をして記録用紙に記録をしている最中に、今度は雛が移動してしまったようで見失ってしまいました。あわてて、最初に止まっていた枝や、こちらから見える営巣木の木々の間を探し回りましたが見つかりませんでした。そして10分ぐらい探しましたが見つかりませんでしたので、これ以上の長居は、良くないのでその場を立ち去ることにしました。
とりあえず1羽は無事巣立っていて、もう1羽も今日の親の仕草や、その後の雛の去り方から、親が巣立ちを促していたのではと思えるようでした(これは確かでなく感情的ですが…)。
今年、横沢入では営巣がとても遅れていましたので、調査に参加している仲間達でとても心配しておりました。しかし営巣、抱卵、育雛とポイントポイントで巣の調査に入りまして、まるで自分の子どものように感じられる子育てを見守らせてもらい、それを他の仲間達と共有してきました。
そして無事に2羽の巣立ちを確認し、その後の定点の観察で、雄の幼鳥を8月に確認し、もう1羽、雌の幼鳥も9月はじめに、雄の幼鳥と共に観察されております。
今後彼ら2羽がどんな状況を生きてゆくのかと子を送り出す親のような気持ちを味わいつつ、横沢入のような里山環境を維持してゆかねばとの思いを感じています。そして来年もまた横沢入のオオタカの営巣を見守ってゆきたいと思っています。
2001.10.30記
※右のイラストは、2001年7月28日 に育雛調査に入ったときに、スケッチし たもので、この年の産卵、育雛は、例年 に比べ以上に遅かったようで、オオタカ 保護連絡会会員や、横沢入調査プロジェ クトのみんなと心配を致しました。
しかしこの日以前に雄が巣立ち、近くで鳴き声をさせており、恐らくこの雌の雛も、親のうながしがあり、この後、営巣木を離れたと思われます。 ですから、まさに巣立ちの日に立ち会えたのかと思っています。今年も、無事に、産卵、育雛、巣立ちを迎えられるよう、監視・調査を続けてお ります。