考察


「食物搬入に関して」
 ビデオ観察21日、のべ220時間37分のデータ分析。その中で食物搬入回数は52回。その中には、雨で前のスギの木の枝が垂れ下がり巣内の様子が非常に見えにくい面もあったが、搬入食物の判定を何回かビデオを見ることによって判定した。その結果としては‥‥‥
@ 搬入食物の大きさの比較によって、その48.1%がスズメ大の小鳥であり、ハト大が19.2%。横沢入地区オオタカ保護検討委員会事務局(環境プロデュース)がまとめた食痕調査結果では47.1%がハト類、ヒヨドリ・ムクドリ・シジュウカラなどの鳥類が17.6%ということだが、ビデオデータとでは全く逆の結果となっている。
 ビデオデータが3倍速で録画しているため判別しにくい欠点はあるものの、小型鳥類ではコガラ・ホオジロ・シジュウカラなど識別できるものもある。
A また、繁殖期前期と後期における搬入食物も、前期は小型鳥類への依存度が大きい。このことから、オオタカが子育てをする最も大切な時期には、小型鳥類(森林性鳥類)が重要な役割をしていると推測される。
B 羽毛も69.2%が確認されている。羽毛確認36例中19例が小鳥。そのうち頭部も確認されているものが8例。
逆に羽毛が全くない状態のもの7例の内、5例がハト大の大きさであった。(後の2例はヒヨドリ大1、シジュウカラ大1)
C 今までの定点観察から得られた補食状況や食痕調査は、我々人間の目に見える範囲での観察結果だけであり、それをルートセンサス結果と結びつけて実際のオオタカの生態行動をつかむことは、見えない部分、特に林内での行動、そして実際の餌となる鳥類の把握という点に於いては十分とはいえない。
「定点調査と成鳥個体行動の付け合わせ」
1、補食行動の確認。‥‥‥ABCE
2、補食行動の未確認‥‥‥@DFG
3、♀に食物の受け渡し(営巣谷西側尾根のヒノキ付近)‥‥‥ABC
@ 実際の狩りの成功目撃はない。また、今まで目視可能な空中での狩りの成功は極めて少ない。
林内での狩りが多いと予想できる。
A 後半に入ると♀の補食行動が目立ってくるが、前半の補食行動は主に♂が行っている。この付け合わせからこの間の♂の補食行動から♀に食物を受け渡すまでのある一定の行動が見えてくる。
B 定点調査で実際に補食成功が確認できないときでも、食物搬入が行われている。
C その時のロスト地点や再発見場所までの場所(林内)が狩り場として重要な意味を持っていると推測できる。
推測できれば、狩り場の想定や、その生態環境によりオオタカの繁殖時期に於ける重要な鳥類層が予想されるのではないだろうか。
D ♂と♀の行動範囲が異なる気もする。
(特に♀の営巣谷西側林内・大31鉄塔・小3鉄塔・小4鉄塔付近)
反省および次年度への抱負
 今回のビデオ設置は、抱卵安定期に実施したため造巣行動・抱卵初認日・孵化日に関してはしっかりと把握することが出来なく、特に孵化日に関しては雛の生育状況などからの推定とした。

 また音声装置の設置に失敗し、全く記録することが出来なく親同士のコミュニケーションや親から雛への警戒音からなる行動の把握などが出来なかった。

 実施回数に関しては、観察日の朝の度に調査員がテープとバッテリー2個を取り替える作業があり、プロジェクトのメンバーとして平日に作業できる者は限られており、また予算の関係によりテープ購入にも限度があり、予定よりも少ないものになってしまった。

 得られた映像も3倍速での録画となり、細かい部分での判別(特に搬入食物の判別)が非常にしにくい面があった。
 カメラの設置位置は、オオタカに影響を与えないような場所を選んで設置したが、雨が降ると前の杉の木の枝が垂れ下がり営巣を隠してしまうことがあった。したがって、雨天時のデータはほとんど得られていない。

 貴重なビデオデータの解析・分析も今回は食物搬入状況と定点調査による狩り行動の付け合わせの2点に限って行ったが、次年度はデータサンプル数を増やし、今年度の調査結果の精度を増すと共に、巣材の搬入状況・親と雛のコミュニケーション・雛同士の関わり合い等についても解析してみたいと考える。

 また、その時期もカメラ設置を造巣前の時期にして造巣行動・抱卵・孵化などもしっかりと把握したい。

目 的 調査の意義と影響 設置の方法 調査方法・体制 調査実施日一覧
結果T食物搬入@ 結果T食物搬入A 調査結果U 考察 Top